もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

小説

 高校生の青春物語でありながら社会人におすすめです。野球部とは何か?組織とは?ドラッカーの著書『マネジメント』を軸とした主人公による組織改革は社会で組織に属するすべての人に必ず役にたつはずです。

作品概要

 『もしドラ』の略称で一世を風靡した異色の小説ですね。非常にジャンル分けに苦労する作品だとは思いますが、内容は高校野球でマネージャーをすることになった女子高生 川島みなみがマネージャーとして活動していくうえでマネージャーとは何か?を調べるためにピータードラッカーの『マネジメント』を手に取ることから物語がはじまります。
 本来『マネジメント』は経営におけるマネジメント=経営管理の役割を書いた書籍であり、高校の部活動を対象にした書籍ではありません。しかし『マネジメント』には組織を上手に運営していくためのノウハウが豊富に書かれており、高校の部活動も一つの組織であることから『マネジメント』は主人公の川島みなみにとって、マネジャーとしての教科書として活用されていきます。本文中でもちょくちょく『マネジメント』の引用が出てきます。

 タイトルは『もしも高校野球の-』ですが、中身は『マネジメント』ありきで野球部の女子マネージャーが野球部を改革し、成功へ導く話を書きたかったんだと思います。感情表現も最小限といった感じです。

 話の展開は結構早く途中なかだるみすることもなくサクサク読めて面白かったです。基本は『マネジメント』通りにすると問題が解決していくご都合主義なところもありますが、人間ドラマをやりたいわけではないので問題ないと思います。

登場人物紹介

【川島みなみ】本作の主人公。都立程久保高校2年生で野球部の女子マネージャーを急遽やることになった。性格は主人公らしく明朗活発でドラッカーの『マネジメント』を理解し実践しているが、ときに感情で動くときもある。メインは野球部の改革だが、みなみ自身も野球に関して過去に何かあったようで多少の伏線は用意されている。

【宮田有紀】川島みなみの親友であり、同じ程高の2年生で野球部の女子マネージャー。病弱で現在も入院中だが部員からの信頼は厚く、聞き上手でもある。みなみがマネージャーをやることになるきっかけをつくった人物でもあり、物語でも重要な役割をはたす。

【加地誠】20代後半で程高野球部の若き監督。程高野球部のOBでもある彼が監督になる前にコーチとして赴任してきたときにある事件にあい、それが原因で積極的な指導ができなくなっていまっている。東大出身で大学時代も野球をしていたことから野球の知識は相当なものだが、コミュニュケーション能力はあまり高いほうではなく、例の事件のこともありせっかくの知識もいかせずにいる。

【二階正義】程高2年生の野球部員。部活にたいする姿勢は当初から真面目でみなみが改革を行う前から積極的に参加している。ただ決してうまくはなく補欠である。将来起業家になるのが夢で『マネジメント』もみなみより先に読んでいる。『マネジメント』に関してはみなみより理解が深くみなみの疑問点に関して良きアドバイスをしてくれる。

【浅野慶一郎】程高2年生の野球部員。1年生のときから1番をつけている程高のエース。気分屋であり理屈より感情が先にでるタイプ。監督の加地とは過去の因縁がありそのことが原因で真面目に部活に取り組んでいない。彼の影響力は大きく現在野球部のだらけた雰囲気をつくっている要因の一つになっている。

【柏木次郎】程高2年生の野球部員。キャッチャー。みなみと有紀とは幼馴染でありみ、有紀とともにみなみの過去を知っている数少ない人物。

どんな人におすすめか

 最初にも書きましたがジャンル分けが難しい作品なので一言では言えませんが、学生よりは社会人むけの小説だと思います。内容はダメ野球部を改革し甲子園を目指す王道ストーリーですが、本質は『マネジメント』を軸とした内容であり組織のありかたや経営管理とは何かを全面に出した内容だからです。アラフィフの私が読んで面白いと感じましたが、10代の人が読んでどう感じたか気になるところです。

まとめ

 BOOK・OFFで安く売られていた(100円)ので購入してみました。これだけ有名な作品が100円とは、相当売れた証でもありますね。最初から最後まで楽しく読め十分元はとれたと思います。
 主人公のみなみだけではなくすべての登場人物にいえることですが、全員外見の描写はなく読者の想像にゆだねられており、本当に余計な描写が無い作品だなと思いました。後半マネージャーが増えるのですが、名前すらなく絶対一筋縄ではいかなそうな入部経緯なのにそこらへんのいざこざはまったく描写されませんでしたね。本筋からずれるせいでしょうけど。

 私が購入したのは文庫版でしたが、あとがきには続編があることも書かれており評判もよさそうなのでいずれ読んでみたいと思います。

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