白夜行

小説

 東野圭吾先生による長編ミステリーです。youtubeでおすすめの小説として出てきたので読んでみたのですが、これが大正解!本当に面白く他に類をみない作品でした。大長編のため毛嫌いするかたも多くおられるとは思いますが、そこは是非読んでみてください。後悔はしないはずです。

 読み終わった後は後悔はしないけど、内容は結構ハードなので少し疲れるかもしれません。次は少し時間をおいて姉妹作品でもある幻夜を読んでみたいですね。

作品情報

書 名:白夜行
発行日:文庫版 2002年5月25日 第1刷
著 者:東野圭吾
発行所:株式会社 集英社
定 価:文庫版 税別1,000円
ISBN:978-4-08-747439-8

作品概要

 物語は1973年大阪から始まり、実際に起きた事件をふまえつつ二人の人物を中心に進んでいきます。一人は1973年に起きた殺人事件の被害者の息子『桐原亮司』、もうひとりは容疑者の娘『西本雪穂』。彼らは主人公でありながら物語の視点はあくまでこの二人ではなく、第三者の視点で語られていき、二人の意図や思惑は第三者が見たことや感じたことから推測するしかありません。これはネタバレになるのかもしれませんが、最後まで二人の感情が描かれることはなく、読者は最後まで推測することしかできません。

 二人のまわりではいろいろと良くない事件が起きるのですが、なんとなくどちらかが関与しているような感じがするのですが証拠はありません。主要な登場人物が強姦未遂や殺人にあうので読んでいると少し暗い気持ちになるときがあります。特に最終章附近では嫌な事件が多く途中で読むのをやめようかとおもったくらいですから。

 主人公の二人は直接的な接点はないはずなのですが、密かに連絡をとりあい協力関係にあるような描写があるのです。どこで知りあったのか?どうして協力関係になったのか?はわかりません。

 文庫本の裏には傑作ミステリー長編と書かれているのですが、私がいままで読んだミステリーとは全然違うものでした。普通のミステリーは犯人を推理するものですが、本書は犯人はわかっているのですが、トリックがわからないし、目的もよくわからないというものです。

 二人の主人公のうち桐原亮司はまだ多少は感情的な描写があり人間味があるのですが、西本雪穂は感情的になることはなく、本当に何を考えているのかはわかりません。演技として感情的なふりをすることはあるんですけどね。行動のベクトルがすべてお金儲けであり、人間的な感情はないように思えます。

読み終わった後の気になること(ネタバレあり)

ネタバレ嫌な人は飛ばしてください。

 

 

 

 

 

 

  

 

 最後まで読むと老刑事の口から謎の9割は語られます。しかし、残りの1割ですっきりしない箇所があったので書こうと思います。むしろここからが私が一番書きたかったことです。

 気になったこと一つ目は中学時代、牟田俊之は秋吉雄一から唐沢雪穂の盗撮写真を買っていました。牟田は雪穂に対してかなりの入れ込みようだったのですが、ある日突然藤村都子の写真も秋吉に頼みました。その後、藤村は強姦未遂になるのですが、強姦未遂と牟田は何らかの関係があるのか?ということです。
 笹垣と篠塚の推理ではその強姦未遂は亮司と雪穂がお互いの利益のために行ったものと推理されていました。そうすると牟田は無関係に思われます。無関係とすると、じゃあ、牟田は何で藤村に興味を持ったのか?という疑問が出てきます。何で雪穂に興味を持ったのかの理由も書かれていないので特に気にすることではないのかもしれないのですが、強姦未遂とのタイミングがあまりにも出来すぎているので気になるのです。単純に考えれば、藤村も雪穂のライバルになるほどの才色兼備らしいのでミーハーの牟田が気になっただけかもしれませんが。

 気になったこと二つ目は後年、桐原亮司は秋吉雄一を偽名として名乗るのですが、何故偽名が秋吉雄一なのかネットでの推理として多いのは自分は裏切り者だからというもの。秋吉雄一=裏切り者=自分という構図です。なかなか信憑性もありもしかしたら作者もそんな意味を込めているのかもしれません。
 しかし、私の意見としては 秋吉雄一=裏切り者 にはならないのではないか?と思うのです。たしかに秋吉雄一は警察の事情聴取にあい牟田に盗撮写真を売っていたことや、菊池のキーホルダーのことを話てしまいましたが、それは市民としては当然のことであり隠していていいことではありません。
 女子中学生の強姦未遂という事件は決して許されるような軽い事件ではなく解決しなければならない事件です。嘘の供述をし誰かを貶めたり、警察を混乱させたりしたわけではなく、事実のみを言った秋吉雄一が裏切り者呼ばわりされるのはおかしいと思うのです。
 しかし、ここで言う裏切り者かどうかはあくまで桐原亮司がどう思うかであり、彼が裏切り者と思い偽名を使ったのであればそうなのでしょう。

 少し支離滅裂になりましたが、読み終えたあとに気になることでした。もう少し細かい所だと、本物の秋吉雄一は現在何をしているのか?とか、園村とMUGENはどうなったのか?なんですけど本編に関係なさすぎるため解明されることはないのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

 東野圭吾先生の作品を読むのはガリレオ以来2作品目だったのですが、まったく違う作風だったように思います。ガリレオを読んだのが10年以上前になるのでそちらの方はうろ覚えなんですけどね。

 文庫本のせいか字も細かくかなりの長編でしたが、先の展開がきになり飽きずに最後まで読めました。章ごとに登場人物が変わるため前章の登場人物はどうしているのだろう?次はいつ出てくるのだろう?という事を思いながら読み進めていきました。

 人生で一度は読んで欲しいほど面白い小説ですが、かなりの長編のため小説を読みなれていない方にはおすすめできません。しかし、ある程度読書に慣れている人には年齢を問わずぜひ読んでもらいたい一冊です。

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